
「子どもにとって、自然遊びっていいんでしょう?」と聞かれることがあります。もちろん、いいことづくめです。でも、「子どもにとって」と同じくらい「母親にとって」も、素晴らしいことがたくさんあるのが、親子での自然遊びなのです。
現在「外あそびtete」として、親子の自然遊びをサポートする活動をしていますが、私自身、山歩きを始めたのは子どもが生まれた後からでした。子どもと一緒だからこそ、母親としてだからこそ、山歩きの魅力にハマってしまったのかもしれません。
山歩きデビューは、子連れハイキング
私が初めて山に登ったのは、娘が1歳半のころ。産後から「ランドネ」(http://blog.sideriver.com/randonnee/)編集部に入ったので、そこで山登りのおもしろさに気づいたのです。ただ、仕事では娘を連れては行けません。だから、休日に夫に娘を背負ってもらい、山へ行くようになりました。
最初に家族で訪れたのは、長野県の入笠山。冬には「富士見パノラマスキー場」として、スノースポーツが盛んな場所です。ゴンドラに乗って、湿原を歩き、1時間もかからず頂上へ着けます。
私たちが行った夏の日、天気がとてもよく、一面に広がる青空にくっきりと並ぶ八ヶ岳は、目を見張る美しさでした。それですっかり山の魅力、自然の中を歩く魅力にとりつかれてしまったのです。

▲初めて登った入笠山頂上で。私が山に慣れてからは、自分でも娘を背負えるようになりました
見えない「よき母親像」からの解放
私が子どもと一緒に歩いたことで得たのは、自然の魅力だけではありません。
それは、「開放感」です。
コースのなかでは比較的歩きやすい道もあり、よちよち歩きの子どもが自由にあっちこっち進んでいくのをゆったりとして気持ちで見ていられました。そのときに、気づいたのです。
子どもに「◯◯しちゃダメ!」という言葉を、言わなくても済んでいる。
ということを。これが、私の「開放感」でした。
レストランやショッピングなどでは、(子どもが大きくなればよりいっそう)この「◯◯しちゃダメ!」を言う機会が増えます。それも、ほとんど母親が言っています。
これを言わなくて「済む」ということ自体が、母親を見えない縛り(自分自身の「良い母親=しつけができる母親」であるべきというプレッシャー)から解放しているのではないか? と思っています。
自然の中では、安全が確保されていれば、「こうあるべき」はほとんどありません。そんな場所で子どもと過ごすことが、母としてホッとできることなのかもしれません。

見守る時間があれば、子どもの新たな一面も見つかる
また、ハイキングでは、歩きながらずーっと子どもといっしょにいます。当たり前かもしれませんが、「歩く」という行為をしながら、1日一緒に時間を過ごすというのは、案外貴重な時間です。
公園では、子どもが遊具で遊んでいるのをチラチラ見ながらも、スマホを見てしまったり、母親同士で話し込んだり。でも、ハイキングなら常に自分の視界の中に子どもがいます。
そこで、子どもがどんなことに興味を示すのか、どんなことを感じるのか、どう反応するのかを観察することができます。「いっしょに歩く」ことが、その時間を作ってくれるというわけです。

いろんな形の葉っぱに興味をもつ子を見て、「うちの子って意外に細かいところに興味があるんだなあ」と思ったり、山道になると集中して登っていく姿を見て「落ち着きがない子かと思っていたけれど、おもしろいことには集中するんだ」とわが子の新たな一面を発見したり。
見守る時間を作るだけで、子どもへのまなざしの幅を広げられるのではないかと思っています。
母として、いち女性として
「子どものために…」と親子ハイキングに参加してくれる母親たちは、「私が楽しかったー!」「私が癒されました~」と口々に言って帰っていきます。
母である前に、いち女性として、一人の人間としてシンプルに自然とかかわっていることに気づくのです。それは、身近な里山歩きでも十分感じられることです。
子どもを「ダシ」に使って、自分のための山歩きにトライしてみてはいかがでしょう?
- 東 麻吏
- Mari Higashi
フリーエディター、webコンテンツアドバイザー。妊婦向け雑誌編集部、ランニング雑誌副編集長を経て、産休後、「ランドネ」編集部へ。登山ガイド栗田朋恵と出会い、「外あそびtete」の活動を開始。親子ハイキングイベントを鎌倉、逗子などで開催。その後、親子向けレジャー情報サイト編集長に。現在はフリーで書籍・雑誌編集、webコンテンツ制作にかかわる。
外あそびtete
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