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2018.6.20

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筆とまなざし #095「白馬大雪渓へ――1年2カ月後のこと」

ここのところフリークライミングばかりしていましたが、先週の土曜日はひさしぶりに山に行ってきました。といっても、目指すのは山頂ではなく白馬大雪渓。昨年春、ここで雪崩に遭遇してしまった友人の慰霊登山に向かったのです。

3つ年上の友人は同じ山岳会に所属していました。同郷だったし面倒見の良い性格から、ぼくにとっては兄のような存在。地元の岩場や小川山はもちろん、八ヶ岳や剱岳のバリエーションルート、白馬主稜、2年前には西伊豆の海金剛にもクライミングに行きました。

友人が雪崩に遭ってしまった、と知ったのは、ちょうどインディアンクリークにクライミングトリップに行っているときでした。ツアーが始まって1週間、ひさしぶりに町に戻ってWi-Fiが繋がったときにその知らせを聞いたのです。あまりの突然のことに頭が真っ白になり、いてもたってもいられない。すぐに日本に帰ろうとも思ったものの、それは建設的ではないということは、落ち着いて考えればわかることでした。とりあえずいまは、友人のぶんまで一生懸命クライミングしよう。彼も、自分のためにクライミングを中断することは望んでないはず。そう思うしかありませんでした。その後の2週間は精神的にきついなかでのクライミングでした。

帰国したときもまだ発見されておらず、警察の捜索がひと区切りしたところで山岳会のメンバーで捜索に行くことになりました。しかし前日に体調を崩してしまい、参加を断念せざるを得ないことに。山岳会仲間の捜索で掘り出してあげることができ、ようやく彼は家族の元へ帰ることができました。どうして無理をしてでも捜索に行かなかったのか。どうしてもそのことが引っかかっていました。

何度か慰霊登山を計画したものの悪天候により中止が続き、事故から1年2カ月後の先日、ようやく山岳会のメンバーと慰霊登山に訪れることができました。捜索に加わったメンバーが現場を教えてくれました。雪で小さな祭壇を作り、彼が大好きだった堅あげポテト、ポッキー、そして花束を供えました。夏には融けてしまう雪。あと5分ここを通過するのが早かったら。結果論ですが、そう思わずにはいられません。そして「もう、なにやってんだよ!」といいたくなるのです。

帰宅すると、少しだけ、心に引っかかっていたものが解きほぐされているのに気がつきました。家には使い古されたカラビナが飾ってあります。それは葬儀の後に譲り受けた、ぼくの大切な宝物。

 

【連載一覧はこちら!】

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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