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2019.9.23

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筆とまなざし#147「思い出が詰まった岩場、錫杖岳『左方カンテ』ルートへ。」

先日はとても久しぶりの岩場に行ってきました。久しぶりといっても数回しか訪れたことはなく、再訪するのは5年ぶりくらい。それでも、自分にとっては思い出のある岩場です。

錫杖岳。北アルプスの岐阜県側の登山口、新穂高温泉手前の槍見温泉から笠ヶ岳へ登る登山道の途中に位置する、標高2,168mの山です。標高は低いものの、その頂上近くには標高差200~300mの巨大な岩壁がそそり立っていて非常に特徴的な景観を作り出しています。もっともたくさんのルートがあるのが前衛フェースと呼ばれる岩壁で、アプローチは2時間ほど。滝谷などのようにアルパインエリアにあるわけではないしアプローチも遠くない。けれど、ゲレンデと呼ぶには少し遠く、また壁が大きい。長らく「準アルパインクライミング」ともいわれ少し中途半端な存在だったそうですが、現在は高難度フリーマルチのルートが多数開拓され、多くのクライマーの目標にもなっています。数回しか訪れていないのに自分にとって錫杖が特別なのは、それぞれに友人との思い出が残っているからです。

最初に訪れたのはいまから10年以上前。山でのクライミングに興味を持ち始めたころのことです。当時いっしょに登っていた友人がガイド試験に合格したおり、お祝いも兼ねてほかの友人と共にガイディングをお願いしたのが錫杖岳でした。前衛フェース手前の岩舎で眠り、翌日「左方カンテ(5.8,7P)」という、人気の高い初級ルートを登りました。当時はマルチピッチもアルパインクライミングもほとんどやったことがなかった自分にとってはすべてが新鮮で覚えることも沢山。なにより、壁の大きさと威圧感に圧倒されたのでした。それからマルチピッチやアルパインクライミングにも少しずつ出かけるようになりました。クライミングの世界を広げてくれた友人との思い出の山行です。

もうひとつの思い出は、ちょうど7年前に行なわれた「東海クライマーズミーティング」に参加したこと。同い年の強力なアルパインクライマーIくんが音頭をとって行なわれ、東海地区在住のクライマーが集まっていっしょに登るというもの。その舞台が錫杖だったのです。当日は東海地方のみならずIくんの思いに賛同した有名クライマーも参加してとても刺激的な1泊2日となりました。1日目は「Little Wing(5.10c,9P)」を登り、翌日は「左方カンテ」と共に人気の高い「注文の多い料理店(5.9,6P)」へ。パートナーは同郷で同じ山岳会に所属し、よくいっしょに山に行っていたJさんとこのとき初めて会ったSさん。これを機にSさんとはいまもときどきクライミングに出かています。しかし、Iくんはいまから4年前にヒマラヤで、Jさんは2年前に白馬で帰らぬ人となってしまったのです。Jさんが雪崩に遭ったとき、Sさんが一枚の写真を送ってくれました。それは、IくんとJさんとぼくが錫杖の沢で水を汲みながらおどけている写真でした。

そんな思い出が残る錫杖へ、今度は妻と出かけました。目指すルートは「左方カンテ」。やはり錫杖での思い出作りはこのルートから始めたいと思ったからです。

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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