ピークス

2019.10.4

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筆とまなざし#149「食材として。絵のモチーフとして。親しみ深い秋の味覚」

10月になっても30℃を超える日が続いているけれど、季節は確実に移ろい変わり、アケビが実を結んだかと思うと桜の葉が色づいては散り始めました。すっかり稲刈りを終えた田んぼの畦は少しずつ褐色に変わっています。

この時期になると、毎年のように栗の絵を描いています。ぼくが住む地域は栗のお菓子で有名なところで、昔から栗が人々に親しまれてきました。故郷の秋と言えば、真っ先に思い浮かぶのが栗なのです。

家へ続く急な坂道を登りきるかきらないかのところに急な曲がり角があり、その角っこに古い栗の木があります。通りかかると、まだ緑色をした大きな毬の中に、なんとも大きく立派な栗が顔を出していました。慌てて車を停めて足元を見るとたくさんの毬栗が落ちています。人間が採るより動物にとられるほうが早いものですが、毬栗の中には虫食いもない綺麗で丸々と太った栗が、まるで宝石のような輝きを放って収まっているのでした。

毬のトゲトゲが刺さらないように靴で毬を開いてひとつひとつ拾っていくと、あっという間に袋いっぱいの栗が採れました。頭上にはまだまだたくさんの栗がたわわに実っています。絵を描くために、鮮やかな黄緑色の毬栗を恐る恐る袋に入れて持ち帰ることにしました。これまで何度も描いている栗ですが、こんなに立派なものは初めて。栗の大きさと艶やかさ、毬の根元の力強さや若くてイキイキとした黄緑色がすばらしい。

昨年は栗ご飯にしたり栗きんとんにしました。今年はどうやっていただこう?春は山菜、夏の終わりはキノコを食し、秋になったら栗三昧。食材となるのはもちろん、それらは格好の絵のモチーフです。台風が去ったらいよいよ気温も下がってくるでしょうか。山里の季節はゆっくりと巡っていきます。

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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