上級

2017.10.25

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筆とまなざし #065「三崎海岸に登り鳥海山を歩いたクライミングトリップ」

山形県と秋田県の県境、三崎海岸にクライミングに行ってきました。伊豆の城ヶ崎に似た安山岩のシークリフですが、城ヶ崎の賑わいはなく、そこには静かな岩場と海が広がっているばかり。岐阜は雨続きの週間予報でしたが酒田周辺は曇り予報。なんとか登れそうなのを期待して向かいました。

松本で友人と合流し、さらに7時間ほどかけて到着したのは昼を少しすぎたくらいでした。今回のメンバーは3人。5日間の予定です。さっそくクライミングエリアへ。三崎海岸の駐車場から、灯台をめぐる遊歩道を歩き、途中から踏み跡をたどって岩場を下ります。北国の海岸線、美しい草原につけられたアプローチに旅情を掻き立てられます。フィックスロープを使って岩場へ下り、ボルダー大の岩を乗り越えながらメインエリアへ。そこには、黒く、部分的にルーフになった傾斜のある壁がずらりと並んでいました。

どのルートも傾斜があって岩の形状も多彩、立体的な動きをしながら登るとてもおもしろいルートばかり。潮で滑る感じにはなかなか慣れませんが、初日から三崎を堪能して終了しました。東北は寒いだろうと思っていたけれど、日が出ると半袖でも暑いくらいの気温。岩場の近くにとったコテージは自炊も可能で近くに温泉やAコープもあって快適そのものでした。

翌日は三崎の看板ルート「ほら貝(5.11c)」を登りました。「12aあっても良いよね」という評判どおり、11cにしては難しかったけれど非常におもしろいルートで、いままで登った11cのなかで一番の好ルートでした。

65_2

3日目はレストがてら鳥海山に登ってみようということに。以前月山の頂上から眺めた秀峰、名前にも惹かれる憧れの山です。標高1,000mほどの象潟登山口から出発。明け方から風が強く、御浜小屋に着くころにはあたりは霧氷で真っ白。頂上はガスのなかで見えませんが、時折真っ白い尾根が遠くに見えるので、まだまだ先が長いことがわかります。パタゴニアのR1フーディーにレインウエアを着ても寒いくらい。もうすっかり冬です。登るごとに霧氷が雪になりました。救いは、登るにつれて風が弱まったこと。体感温度は全然違います。御室の小屋から頂上まではわかりやすいように黒い岩に白いペンキでルートがマーキングされているのだけれど、あたりは霧氷で真っ白になっているので逆にペンキがわかりにくい。なだらかなイメージのある鳥海山の頂上は、火山特有のゴツゴツした溶岩の迷路を越えた先にありました。小さな標識と「2236 新山」と書かれた岩があるだけの、なかなか地味な頂上が意外でした。

頂上の溶岩は三崎の岩場とまったく同じでした。この山があるからクライミングができる。鳥海山に登ることで岩場とのつながりを実感することができたのはおもしろい経験でした。最終日は少々雨に降られたものの登ることができ、5日間のクライミングトリップが終了。これまで、クライミングに出かけたらクライミングだけ、山に行こうとは思いませんでしたが、遠くへ来たら山にも足を延ばすと旅がより充実する。それは自分にとって新しい発見でした。

 

【連載一覧】
#001 山の小屋から
#002 夏になったら――
#003 北アルプス、そのまた北へ(前編)
#004 北アルプス、そのまた北へ(中編)
#005 北アルプス、そのまた北へ(後編)
#006 真夏の小さな物語
#007 初めてのマルチピッチ(前編)
#008 初めてのマルチピッチ(後編)
#009 星野道夫さんに会いに行く
#010 吉田 博と「劔山の朝」
#011 上高地スケッチ絵画講座、開講
#012 偉い! とうなったおすすめギア
#013 ドロミテ山塊へのクライミングトリップ
#014 笠置山クライミングエリアの開拓
#015 秋のよろこび、中津川の味覚「栗きんとん」
#016 ようこそ ようこそ 笠置山クライミングエリア
#017 カフェのご主人、お客さんと、秋の野外水彩画教室
#018 3代目の山道具、ラ・スポルティバのボルダーXミッド
#019 山と道具の2017年カレンダー
#020 ちびっ子クライマーたちの外岩デビュー
#021 鍛金ワークショップで自分だけの山道具を作る
#022 太平洋に面した“最果ての地”のクライミング
#023 菊池哲男さんが写した、美しきアルプスの星夜
#024 憧れのヨセミテと、クライミング計画2017
#025 アウトドア文化としてこの地域に根差すために
#026 年末年始の相棒に、拳大の小さなストレッチギア
#027 中津川のお正月。明けましておめでとうございます
#028 名古屋で『吉田博 木版画展――抒情の風景』を見る
#029 名古屋の古着屋でめぐり合った、お守りのカラビナ
#030 徳島県は日和佐海岸へ、6日間のクライミングトリップ
#031 展示会シーズン! 笠置山クライミングエリアのために
#032 長衛小屋の手ぬぐいと、カモシカスポーツのTシャツ
#033 すてきな山の紙モノを見つけられる『アラスカ文具店』
#034 クライミングトリップの新しい相棒は超大型ギアバッグ
#035 東海の名物ルート、運否天賦(5.13c)にご対面
#036 笠置山クライミングエリアでアウトドアフリマを開催!
#037 特注品もオーダーできるナンガのコンセプトショップ
#038 笠置山クライミングエリアで講習会を開催します!
#039 早春の根ノ上高原から、残雪の恵那山を見上げる
#040 初めての笠置山登頂は高橋庄太郎さんといっしょに
#041 日本百名山・恵那山の麓で原画展を開催します
#042 自然の造形と想像力。初めてのアウトドアクライミング
#043 アメリカ、赤茶けた大地へのクライミングトリップ
#044 アメリカ、インディアンクリークでのクラック強化合宿
#045 南アルプスを描いた山梨県・白山でのスケッチ教室
#046 クライムオン!! でトラッドクライミング入門講座
#047 穏やかな春の味覚。山菜と木曽地方の朴の葉料理
#048 ついに念願叶ってインストラクター資格を取得
#049 アラスカ、アンカレッジ取材で出合った老舗登山用品店
#050 複製画も並ぶ展覧会『北アルプスの風景』を開催します
#051 アメリカ西海岸の風が吹くナチュラル アンカーズ
#052 夏の一日、森をめぐる物語
#053 アルパインクライミングで楽しむ夏の八ヶ岳
#054 潔い子どもたちと、夏の高尾山で山のスケッチ教室
#055 雨続きの8月、クライミングエリアの開拓にひと汗かく
#056 岐阜から岡山まで、ぶらり大人の青春18きっぷの旅
#057 小川山のフリークライミングと檜枝岐の沢登り
#058 夏の終わり、秋の気配
#059 小川山のクレイジージャムをめぐる思い出
#060 彼岸花の咲くころに。近場に隠れる美しい風景探し
#061 心地よい秋晴れの午後、笠置山までちょっと登りに
#062 御在所岳、東海地方のクライミング・ゲレンデ
#063 10月の3連休。季節の変わり目の岐阜暮らし
#064 移ろう季節、アトリエ小屋の裏庭にアケビが実る

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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