上級

2017.12.27

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筆とまなざし #073「人気のフェイスルートにて、ひとりの女性の挑戦」

笠置山での新エリア公開イベントが終わり、関東出張から帰ってくると、今シーズンの目標だった「曼珠沙華5.13c/d(13d?)」も思いのほか早く登ることができました。すっきりした気持ちで年末年始を迎えられそうです。

笠置山でのクライミング講習はもう寒くなってしまったため、最近は近くの花崗岩の岩場へ行くようになりました。標高が低くて日当りの良い里山に岩が点在していて、よほど寒いときでなければ冬でも快適に登ることができます。古くから登られている岩場で、あまり高さはないもののクラックが多く、非常にありがたい岩場です。有名なのは「アダム5.11b」「イブ5.11c」というフィンガークラック。どちらも三ツ星ルートです。

「イブ」の左に、短いけれど人気のフェイスルートがあります。「原住民5.10b/c」というルートで、中間部から上のムーブが核心。とくに背の低い女性などは細かいホールドをつないでいかなくてはならず、なかなか苦労するルートです。

市内に住むNさんは、ぼくがインストラクターの資格を取ってから一番講習会に来てくれている60代の女性です。最初に出会ったのはもう5年くらい前で、カモシカスポーツの展覧会に来てくれたのがきっかけでした。今年の夏は小川山のクラックに通い、笠置山でも何度も講習会をしました。もともと登山をしていて、クライミングは始めて5年ほど。身長154cm。以前からときどき「原住民」を触ってはいるものの、やはり核心部分が越えられる気配がありません。本人も最初からできるわけがないと思っているようです。

Nさんにとって、いままででもっとも因縁のルートが「原住民」です。足に乗り込んでいくムーブが重要なので、クライミングジムで特訓をしてから先週の講習会に臨みました。その甲斐あってか、何度かムーブを探ると途切れ途切れではあるけれど初めて良いムーブが見つかり核心を越えることができました。あとは下からつなげるだけです。その日は一日中「原住民」をトライし続け、夕方、一度だけ核心を越えました。

「登れた!」

見ていただれもがそう思いました。あとは左足を良いスタンスに置いて伸び上がっていくだけ・・・しかし、なぜかNさんの左足はスタンスではなく空中を踏もうともがいているのです。当然そんなところに乗れるはずはなく、「あーれー」とロープにぶら下がってしまったのです。聞くと、核心を抜けられたことで頭がいっぱいで、上ばかり見てしまい、足を置く場所を見ていなかったらしい・・・。その後、日没まで粘るも無念の終了。次回へ持ち越しとなりました。

その後もジムでの特訓を積み、いよいよ明日がリベンジの日。Nさん、因縁のルートに決着がつけられるかどうか?! こちらまでワクワクしてきます。

 

【連載一覧はこちら!】

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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