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2018.4.11

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筆とまなざし #085「伝説的クライマーの生涯を描いたドキュメンタリー映画」

土曜日はひさしぶりに名古屋の町へ出かけてきました。目的は、パタゴニア名古屋で上映される映画「DIRTBAG」を観るためです。

昨年、アメリカで公開されたこの映画の主人公はフレッド・ベッキー。彼の伝説的なクライミング人生を描いたドキュメンタリーで、本人はちょうどこの映画が完成する昨年10月に94歳でその生涯を閉じました。

恥ずかしいながら、フレッド・ベッキーのことを知ったのは数年前のこと。パタゴニアのカタログに掲載された印象的な写真を見たときでした。

ヨレヨレの服を着て、ヘルメットを被り、ロープを肩にかけたおじいちゃん。「Will Belay For Food!!!(ビレイと交換に食料をくれ!)」と殴り書きした段ボールを掲げて路肩でヒッチハイクする写真。こんな年になってまでクライミングバムをしている人がいるのか! 新鮮な驚きとともに、ある憧れを抱いたことを覚えています。すごい人がいるものだと。

「DIRTBAG」とは、「人間のクズ」とか「ゴミ袋」とか、そういうニュアンスのスラング。けれど、「dirtbag climber」だと、クライミングに人生を捧げた人間など、肯定的な意味になるといいます。定職を持たず、道端で眠りながら(家はあったようだけれど)クライミングに人生をかけたフレッド・ベッキーに対する、畏敬の念を込めてのタイトルでしょう。

1925年にドイツからシアトルに移住したフレッド・ベッキーは子どものころから登山やクライミングを始め、16歳のときに、シアトル周辺のクライマーにはとても登れないと考えられていたマウント・ディスペアーに初登頂。興味深いことに、当時は北米西海岸の山々(カスケード山脈、カナダのコースト山脈など)のほとんどは未踏峰だったらしい。彼はそれらの山を次々と初登頂し、花崗岩の針峰群で有名なバガブー、アラスカの山々などでも困難なクライミングを遂行。当時の最先端クライマーとなり、アメリカでもっとも初登頂の多いクライマーとして伝説的な存在となりました。

さらにおもしろいことは、彼がかなりの博識で、たくさんの著作を残していること。ルート図集などは、その後のクライマーにとってのバイブルともなったようです。

映画は、当時の写真や映像、フレッド自らはもちろん、著名なクライマーのインタビューなどによって構成。写真がいちいち格好良く、足元のふらつく老年(80歳を優に越えている)になりながらも、クライミングギアを満載したバックパックを背負ってアプローチし、岩をよじ登る姿は圧巻。自分が行きたい山があるときは電話をかけまくってなりふりかまわずパートナーを探す姿も印象的です。

4月中に、札幌、大阪、渋谷のパタゴニア直営店、そして神戸のグラビティーリサーチでも上映予定とのことなので、まだ観ていない方はぜひ!

 

【連載一覧はこちら!】

 

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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