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2018.8.23

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大町登山案内人組合ガイドさんと行く、後立山連峰をめぐる山旅【Vol.2】

大町登山案内人組合ガイド、そして北アルプス北部遭対協救助隊員である矢口拓さんと行く、後立山連峰をめぐる山旅連載。3日間の工程を1日ごとにお送りしていきます。
今回は第2回目。
後立山の山旅2日目は、針ノ木小屋を出発し、種池山荘までの極上の縦走路を歩く9時間の行程となる。
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まだあたりが薄暗いころ。私たちは日の出を稜線で見ようと、午前4時に針ノ木小屋をたった。フロントにおかれた朝食と昼食のおむすびには、針ノ木小屋の百瀬さんから「お気をつけて」とのメモ書きが。心遣いに感謝しながら針ノ木岳に向かうと、山々の向こうが朝焼け色に染まりはじめた。振り返ると針ノ木小屋の屋根が朝日に照らされて赤く浮かび上がる。

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あっという間に移りゆく朝日がつくり出す色彩の景色。息をのむ光景に言葉もなく、ただただ朝の光を浴びながら佇んでいた。

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針ノ木岳を越えて、左手に立山や剣岳を独占しながら、眼下には黒部の谷。絶景に後押しされながらスバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳へ。前日の柔らかな山容の蓮華岳とは打って変わり、力強く圧倒されるような山々が連なる縦走路をゆく。

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鳴沢岳からゆるやかに下りていくと、山小屋の屋根が顔を覗かせる。新越山荘に辿り着いた。
「お久しぶりです」と矢口さんと挨拶を交わすのは、支配人の中西厚喜さん。私たちを笑顔で出迎えてくれた。

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夏の登山シーズンに入り日々忙しいそうだが、中西さんは「お客さんのために道の整備ももっとやりたいし、山荘も手直しが必要だし」と語りながらも、「スタッフのみんなには休暇をあげないと」と、気配りを忘れない。

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静かな小屋のなかはきれいに整えられ、窓からは立山の山々を一望できる。
「夏のあいだはなかなか会えないですが、お互い頑張りましょう」という矢口さんに、「秋の(救助)訓練で会いましょう。事故のない年にしたいですね」と、中西さんは気を引き締めている様子で見送ってくれた。

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新越山荘を出発すると、さっそく花畑が私たちを出迎えてくれた。今年は半月ほど早い開花と、遅咲きの春の花々が入り交じり、ミヤマキンバイやシナノキンバイ、チングルマなど、さまざまな花々が咲き誇る。また、淡いクリーム色のコバイケイソウが斜面いっぱいに広がっていた。

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「この時期にこれだけ咲いているということは、数年に一度のコバイケイソウの見頃に当たったようです。幸運ですね」と、矢口さんが教えてくれた。
コバイケイソウの見事な群生に、色とりどりの可愛らしい高山植物の花畑。ヨーロッパアルプスさえも連想してしまうようなすばらしい景色に目を奪われながら、縦走路の疲れをも癒してくれた。

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歩みを進めると、向こうに赤い屋根のかわいらしい小屋が見えてきた。種池山荘だ。
美しくキヌガサソウが並んで咲く道を登り、平らに整備されたテント場を抜けると、小屋の庭に到着。この日は、地元の中学生が「学校登山」で登ってきたといい、たくさんの元気な中学生たちで賑わっていた。
「私も初めての小屋泊まり登山はここ、種池山荘でした」と矢口さん。「種池山荘に至る柏原新道は、北アルプスで入門の道と言われる初心者から楽しめる歩きやすい登山道なんです」
学校登山で中学生たちが歩いてきた柏原新道は、扇沢出合から、比較的一定の斜度で、整備も行き届いているため歩きやすいそうだ。途中、「モミジ坂」「水平道」「鉄砲坂」などの名が付けられ、登山者の目安にもなり、分かりやすさも人気の理由のようだ。

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小屋の玄関を入ると、種池山荘の支配人・原久訓さんが「お待ちしていました」と優しそうな笑顔で出迎えてくれた。原さんと矢口さんは同年代で親交があり、みんなで雑談していると、「小屋の壁にある種池山荘の文字は矢口さんが書いたんですよ」と教えてくれた。
さっそく庭に出て、「種池山荘」の文字を眺めてみる。「すごく達筆ですね」と言ったら、「まさか(笑)。手書きではなくて印刷で文字を出していますよ。じつは少し斜めになっているんですけどね」と、こっそり教えてくれた。言われてみればなんとなくそんな気がするが、ちっとも気にならないほど、しっくりと文字がおさまっている。
そうこうしていると原さんが、矢口さんおすすめの種池山荘名物、手作りピザを焼いてくれた。長い縦走のご褒美とすることに。

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サクサクの生地にとろけたチーズがたっぷりで、思わず「おいしい」と声を上げてしまう。生ビールといっしょにほおばれば、また格別のおいしさだ。
溶岩のプレートで焼き上げるというピザは、小屋のスタッフが生地やソースから作っている逸品で、夏と秋、期間と数量限定で販売しているという人気商品。訪れた際は、ぜひ注文したい一品だ。
庭のベンチでピザや生ビールに感動していると、矢口さんと仲のよい小屋番のみなさんが次々に声をかけてくれた。気さくなみなさんとの楽しいひとときだ。

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北アルプスの稜線で遭難防止と救助活動に携わる、夏山常駐パトロール隊の烏帽子班長でもある矢口さんと同僚で、担当区が隣という坂本学さんも小屋に戻ってきた。
隊員は50日間、稜線に暮らして活動するそうで、この日は登山道のパトロールをして拠点のひとつである種池山荘に来たという。挨拶を交わしたあとは、矢口さんと業務連絡。先ほどの気さくな笑顔での談笑のときとは一変し、真面目な面持ちのふたりの姿に、登山者の安全のための活動の裏舞台が少しばかり垣間見えた。
山小屋のみなさんや中学生たちなど、たくさんの笑顔と笑いの絶えない明るい雰囲気の種池山荘で、2日目の山旅を終えた。

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2日目のルートは針ノ木小屋から出発し、針ノ木岳(2821m)ースバリ岳(2752m)-赤沢岳(2678m)-鳴沢岳(2641m)-新越山荘ー岩小屋沢岳(2630m)-種池山荘までの、コースタイムトータル9時間、5つの山頂を踏む大縦走路。時間の余裕を持って途中の山小屋でしっかり休みながら歩きたい山旅だ。工程に余裕があってもっとゆっくり歩きたい人は途中の新越山荘まで、より健脚な人はさらに先の冷池山荘まで歩くのもいいかもしれない。

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文◎矢口 拓 、阿部 静 Text by Taku Yaguchi,Shizuka Abe
写真◎後藤武久 Photo by Takehisa Goto

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