ランドネ

2019.2.8

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モデル仲川希良の「山でお泊まり」長野県・飯山編Vol.1

『ランドネ』9月号からスタートした、モデル/フィールドナビゲーター仲川希良さんの新連載「山でお泊まりレポート」。

スペースの関係で誌面に収めきれなかった情報は、こちらのサイトで偶数月に美しい写真とともにお伝えしてきます!

第4回目は、フィンランドからのお客様、アーティストのテーム・ヤルヴィさんといっしょに長野県飯山へ。日本ならではの山と里の文化や歴史、信仰を味わってきました。

***

森を歩き作品を作る、フィンランド人アーティストのテーム・ヤルヴィさん。作品の展示で来日する予定に合わせて、日本の森を歩いてみたいという連絡をもらいました。

みなさんだったらどこにお連れしますか? またとない機会に、限られた時間で何を見てもらおう……そもそも日本の森って? あれこれ迷っていたそんなとき、たまたま仕事で訪れた長野県飯山市で、「あ、ここがいいかもしれない」とピンときました。

「兎追いしかの山〜」と始まる童謡「故郷」の作詞者は、この土地の生まれだそう。日本一長い千曲川の両岸に広がる穏やかな田園風景は、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。

周りをぐるりと囲む山々の一つ、小菅山は、かつて北信濃の三大修験場として栄えた場所。ふもとの集落には、日本古来の里山の風景や信仰、文化が残り、国の重要文化的景観にも指定されています。

山が、人々の生活に深く関わっていること。自然が信仰の対象となっていること……テームさんに見せたい日本は、こんな景色かもしれない。

山のご案内は、小菅山のふもとに住む、山伏の志田さんにお願いすることにしました。

▲山に入る前、注連を首にかけて穢れを祓う

まずは小菅の里を歩きます。
もう秋は終わりの時期、里のあちこちで柿が鈴なりに。色とりどりの紅葉は陽に透けて輝いていました。

▲小菅神社里社

▲志田さんの法螺貝の音と祈りの言葉に合わせ、テームさんと私もご挨拶

小菅神社里社、講堂、菩提院観音堂、今も里に残る歴史的建造物をひとつひとつ巡って祈りを捧げます。
最盛期には37もの宿坊に、300人を超える僧侶や修験者がいたそう。里に満ちる穏やかな静けさのなかで、かつての繁栄を想像してみました。

▲菩提院観音堂

▲中の壁には墨で描かれた江戸時代の落書きが

歴史を感じながらゆっくりと歩いて、たどり着いた奥社参道入り口。
山の中腹にある奥社本殿まで続くこの道は、参道であり、今回の登山道です。参道入り口は標高550m、1.2km先にある奥社本殿は標高870m、小菅山山頂は1047m。大きな起伏のないフィンランドに住むテームさんにとって、厳しい道にならないか……ちょっぴり心配しながら足を踏み入れました。

▲約180本、800mに渡って続く杉並木

木の鳥居から先は苔むした自然石の階段が続き、両脇に樹齢300年ともいわれる立派な杉が立ち並んでいます。参道は年に2回、「おてんま」と呼ばれる里の住民総出の共同作業で手入れされているそうです。
大木に見守られ一歩一歩進むにつれ、これまで以上にスッと心が整っていくような気がします。
どっしりとした幹に手を触れながら、「日本人が山を神聖な場所として大切に扱ってきたことが伝わります」とテームさん。道に重ねられた人々の思いを、感じ取ってくれたようです。

▲愛染岩

▲谷の向こう側の不動岩……小さな不動明王が見えるでしょうか?

遠く霞む妙高山に向けてまっすぐ伸びる参道や、深い谷を挟んで対峙する愛染岩と不動岩。山全体が曼荼羅を意識してデザインされている……など、興味深い志田さんのお話を聞きながらの登山。岩や巨木に目を留め、祈るという行為は、なんだかいつも以上に山に対して謙虚な気持ちにさせてくれました。

振り返ると、山に見守られ輝く民家や田畑。その間を悠々と流れる千曲川。

▲里を眺めて志田さんは法螺貝をひと吹き

途中、鎖を使ったちょっとした岩登りもありましたが、無事に小菅神社奥社に到着しました。
本殿は背後の岩窟と一体化するように作られています。

▲今の建物は室町時代中期のもの。国の重要文化財

▲岩から生まれ出たかのような本殿の壁

扉は閉められていますが、本殿の奥からはかすかな水音が……中には甘露池があり、この池こそが、最初に信仰の対象になったのではと言われているそうです。
水は命を支える大切なもの。昔も今もそれは変わりません。

▲息を潜めて耳をすませて……

▲御神木

きっと修験者もここで瞑想したと思いますよ、と、志田さんが秘密の場所に連れていってくれました。

▲岩に抱かれるような小さな窪み

見下ろす谷には次から次へと、枝から離れたばかりの葉が落ちていきます。動きを止めじっと見つめていると、落ち葉がたてる音まで聞こえてきます。
その瞬間、里からのぼってきた風が落ちていたはずの枯葉を優しく吹き上げていきました。巻き戻された映像のように、ゆっくりと空に昇っていくたくさんの葉。時空を超えたような、不思議な浮遊感に包まれたひと時でした。

***おまけ***

じつはちょっぴり山伏修行を体験したことがある私。志田さんとお話していたら、なんと同じ先達(山伏の指導者)のもとで修行していたことが発覚!
こんな偶然ってあるんですねえと、出羽三山のふもとにある宿坊・大聖坊の星野先達がつないでくださったご縁に感謝したのでした。
なかなかの苦行ですが、ご興味がある方はぜひ一度体験を☆

写真◎後藤武久

仲川希良
Kira Nakagawa

モデル/フィールドナビゲーター。テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。自然が好きで、登山歴は9年目。里山から雪山まで幅広くフィールドを楽しみ、その魅力を伝える。初の著書『山でお泊まり手帳』好評発売中(エイ出版社)

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