初級

2017.5.25

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高橋庄太郎と猪野正哉が千葉県の烏場山へ。~「山を歩く、山で語る」番外編~

■今回歩いた人■

猪野さん本データ

左:高橋庄太郎(山岳/アウトドアライター)、右:猪野正哉(たき火ヴィレッジ〈いの〉管理人/ライター)

 

 

日本でいちばん「平ら」だといわれる千葉県。実際、最高峰の愛宕山は標高408mと、全47都道府県のなかで、もっとも低い。だが、海辺から山頂まで「SEA TO SUMMIT」な山行も楽しみやすく、ひとたび森に入れば、深い緑が待っている。低いといってつまらないのではなく、むしろ新たな魅力を感じられるはずだ。

 

『PEAKS』5月号に掲載された対談連載「山を歩く、山で語る」第5回のゲストは、猪野正哉さん。「たき火ヴィレッジ〈いの〉」の管理人であり、アウトドア系ライターとしても活躍している、僕・高橋の昔からの友人である。じつは、この千葉県は猪野さんの地元であり、いっしょに登った烏場山は、猪野さんもおすすめの山。標高は266mしかないが、海辺からは想像以上に歩き甲斐がある里山なのである。

お互いクルマでやってきて、集合場所は「花の広場公園花夢花夢」の駐車場。道路を渡った場所には太平洋が広がり、気持ちよい潮風が吹き抜ける。

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まさに出発地点は0mだ。こんな場所が山歩きのスタート地点とはおもしろい。

 

当初は集落のなかの車道を進んでいく。このときは3月でちょうど菜の花が美しい時期。そんな花に囲まれるように道標が設置されている。

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僕たちが登りで使おうと思っていたのは「花嫁街道」という名の山道だ。その昔、山村と漁村のあいだにつけられ、嫁入りする女性が通ったことが由来らしい。しかし今回は、いい歳をした男2名で歩いていくのである。

 

車道から登山道に入ると、すぐに深い森が広がっている。

_I2Q8860

急な場所はほとんどなく、地元の方も気軽に散策に訪れているようだ。その代わり、標高266mしかないというのに、思いのほか歩行距離は長い。山頂までのコースタイムの目安は2時間30分ほどだろう。

 

ルート上にはいくつかの展望台がある。しかし……。第一展望台は樹林に囲まれており、視界はきかない。かなり昔であれば見えていたのかもしれないが、周囲の木々が育ってしまい、今は展望台とは名ばかりの場所になってしまっている。

画像3

それに比べれば、第二展望台はだいぶマシである。すっきりと海が見えるわけではないが、ゆっくりと休憩したくなる場所だ。

 

途中、マテバシイが茂った森を通る。葉は頭上高い場所にあり、目に入るのは密度も濃く繁茂した木の幹ばかり。どこか不思議な雰囲気だ。

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マテバシイは常緑のブナ科で、暖かな海に面した房総半島の海岸に多い樹木なのである。

 

その後、尾根に出ると視界がききやすくなってくる。

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とくに第三展望台の前には起伏も緩やかな千葉の山々が目の前に展開し、空気が澄んでいれば富士山の姿も見えるという。このときは春霞みで確認できなかったが、また来たくなるようなポイントである。

 

それからもう少し歩くと、とうとう烏場山だ。この山頂はある程度の広さがあり、のんびりと心身を休めることができる。周囲の景色もなかなかのものだ。山のイメージが希薄な千葉県だが、こういう海岸付近の森の魅力はもっと知られてよいだろう。

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僕は以前歩いた、東北の「みちのく潮風トレイル」のことを思い出していた。あちらのほうがかなり北にあるとはいえ、同じ太平洋岸。共通した雰囲気を持っているようである。

 

僕たちはここで昼食をとることにした。といってもカップラーメンだが、猪野さんの一工夫で、お湯の代わりに温めた牛乳を使用した。

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だが、じつは途中でその牛乳をこぼしてしまい、マイルドになるはずの味は、むしろ濃厚に……。まあ、こういう失敗はよくあることである。

 

『PEAKS』での対談では詳しく書いたが、僕が以前ファッション誌で働いていた時代、猪野さんはその雑誌の専属モデルであった。そのときの思い出の写真などを猪野さんはわざわざ山頂まで持ってきてくれていた。

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いまや懐かしいポラロイド写真に映っているのは、僕と猪野くんなどのモデルさん。僕が珍しくスーツを着ているのは、年に1度のファッション誌グループのパーティだったからだろう。僕のこういう時代のことを知っている友人というのは、今のアウトドア分野ではごくわずか。なんだか恥ずかしいものである。

 

頃合いを見て、下山を開始する。往路とは異なる道でコースタイムは登りよりも短く、2時間程度だ。

 

雨が降っていれば滑りやすいと思われる場所もあるが、気持ちよく晴れたこの日は、いたって快調である。

 

登りが花嫁街道ならば、下りの道は「花婿街道」。この道を本当に花婿が通った歴史があるのかわからないが、たんに花嫁に対応して花婿という名前にしただけかもしれない。

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こちらの途中には、旧烏場展望台がある。ベンチもあって、休憩適地だ。しかしまあ、烏場山は展望台だらけである。

 

花婿街道で楽しみにしていたのが、落差が15mもある「黒滝」。両サイドは険しい崖になっており、どことなく神秘的である。

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冬が終わったばかりの3月は水量が乏しかったが、降雨後はダイナミックな景観になるようだ。僕たちはその近くの神社で手を合わせ、さらに下山を進めた。

 

それから先は、黒滝からの水の流れとともに進んでいく。さすが温暖な房総半島だけあって、3月でも緑は豊かだ。

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しかし夏になれば、水と緑が織りなす風景は、もっと美しくなるに違いない。今回のルートを反対から歩けば、黒滝や渓谷は駐車場から至近距離。涼を楽しむために、再訪するのもよさそうだ。花園広場という場所まで出ると、登山道は終了した。あとは再び自分たちのクルマへ戻るだけである。

 

車道の道端にはイノシシを捕るための大きなワナが置かれていた。実際、登山道にはイノシシが地面を掘り起こしてエサをあさった痕跡が非常に多かったのである。

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次にこの山を歩いたら、イノシシに遭遇するかもしれない。クマほどではないが非常に危険な動物なので、少し注意しておいたほうがいいだろう。

 

休憩込みで6時間少々とはいえ、充実した山の日帰り旅。海から山へ、山から海へと歩くコースはバリエーションに富み、山の楽しさは標高とは関係がないことがよくわかる。

無題

僕はもともと海が見える場所を歩くのが好きだ。これを機に、千葉県の山をもっと探索していくのも悪くない、などと考えながら、海沿いの道を駐車場へと向かっていった。

今回の2人の道具ピックアップ

猪野さんが履いていたシューズは、エコー「BIOM VENTURE MENS YAK GTX」。エコーは年配の方に人気のブランドで、自分のことを「天邪鬼」だといい、人とは違ったアイテムやメーカーをあえてチョイスしてしまうことが多いらしい猪野さんらしいセレクトだ。だがアッパーは耐久性に優れたヤクヌバックで、しかもゴアテックスサラウンドプロダクトテクノロジーを採用しているため、透湿防水性はバッチリだ。ハイソックスを合わせているのは、タイツをはかない代わりだそう。バックパックは、マウンテンパーカーで有名なシエラデザインの「フェザー25」。5~6年前にセールで65ℓサイズの別のバックパックといっしょに購入したものだ。カラーリングも気に入っており、メキシコで購入したロザリオを飾りに付けている。

低山かつ荷物も少ないので、僕・高橋が履いていたのは、ローカットのシューズ。ゴアテックス・サラウンド・プロダクト・テクノロジーを使用したマムート「コンフォートロウGTXサラウンド」である。このテクノロジーを使用したシューズはとにかく蒸れが少なく、汗をかきやすい温かい時期にはとても重宝している。ただし、だいぶはきこんだので、ソールの摩耗が進み、いくぶん滑りやすくなった。次に同モデルの新品を買うか、まったく新しいものにするか、迷いどころである。腕時計は標高などの精度の高さが頼もしいカシオのプロトレック「PRW-6000」。文字盤の視認性が高く、カーボンファイバーを使ったベルトは汗をかいてもあまりベタつかないのも、お気に入りのポイントだ。最近USB充電の時計も増えているが、バッテリー切れを面倒に思うことが多く、このモデルのようなソーラー充電式のありがたみを実感している。

 

今回歩いたルート

■ルート■
「房総半島・烏場山(花の公園花夢花夢~花嫁街道~烏場山山頂~花婿街道)



■アクセス■
花の広場公園の駐車場は無料開放。クルマを使わない場合は、JR内房線和田浦駅から登山口へと向かうが、それほど時間がプラスされるわけではない。途中には水場がなく、黒滝の水も飲料には向かないので、とくに暑い時期は飲み水を十分に持ちたい。


■コースタイム■
4時間30分

写真◎逢坂 聡

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