初級

2017.7.13

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高橋庄太郎と成瀬洋平が岐阜県の笠置山へ。~「山を歩く、山で語る」番外編~

【今回歩いた人】

無題

左:高橋庄太郎(山岳/アウトドアライター)、右:成瀬洋平(イラストレーター、クライミング・インストラクター)

 

 

以前はアウトドア系ライターとして、僕の仲間だった成瀬洋平さん。現在は郷里の中津川に戻り、もともと本職にしたかったという絵を描きながら暮らしている。

 

成瀬さんがUターンした時期と同じころ、クライミングの一大エリアとして公開されたのが、この笠置山だ。自宅から近い場所でクライミングが盛んになるにつれ、成瀬さんも笠置山にたびたび足を運ぶようになり、エリアの整備に加わるだけではなく、いまやクライミング・インストラクターとしても始動。絵とクライミングという好きなこと2つを存分に行っている成瀬さんの生活は、じつに幸せそうだ。

 

だが、成瀬さんが通い続けているのは、クルマで行けるクライミングエリアばかり。なんと、登山道を使って山頂まで歩いたことはいまだないのだという。

_AJM0019

 

そこで今回は、登山道でとうとう笠置山の山頂へ。成瀬さんは笠置山をよく知っているはずだが、登山口にあった登山ルートの概念図を改めてマジマジと眺めている姿は少しおもしろい。

登山記帳小屋前の駐車場から歩きはじめると、すぐに針葉樹の森。しっかりと枝打ちされ、まっすぐに天へと伸びる姿は、なかなか美しい。

無題2

そのかたわらには、笠置神社と刻まれた古い石碑もある。笠置山はクライミングだけではなく、宗教の山でもあり、山頂には笠置神社奥社が建立されているのであった。

この山はまた、市民の山でもある。そのために、多くの場所に看板が立てられている。

こちらは初夏になると真っ白な花を咲かせる「ヒトツバタゴ」についての掲示。

無題3

この植物はこの地域以外には日本海の対馬にしか自生しておらず、本州ではここだけ。非常に貴重なのである。

ヒトツバタゴ自生地からさらに歩くと、今度は「あんこ」生息地についての標識。

無題4

あんことはハコネサンショウウオのことで、この沢は「あんこ沢」。よほどあんこがいるのだろう。ちなみに、あんこを生きたまま飲み込むと、美声になるとのこと。気になる人は試してみてもいいかもしれない。

途中でいったん林道に出ると、木のベンチ。急いでも仕方なかろうと、さほど疲れてもいないのに休憩をとる。

無題5

 

成瀬さんと僕は、北アルプスの槍ヶ岳北鎌尾根というバリエーションルートへいっしょに行ったことがある。ある程度のクライミング技術が必要で、行動中は緊張を強いられる北鎌尾根に比べれば、笠置山の登山道は平和そのもの。こんなにのんびりと2人で歩く日が来るとは思いもしなかった。

今回のルート上に、水場は一か所。山腹から湧き出した清水は口当たりがよい軟水だ。

_AJM0248

両手ですくって口に入れると、ますます笠置山とお近づきになれた気がする。山中にこういう場所が一か所あるだけでも、登山者の心は豊かになるだろう。

さらに登ると、笠置神社奥社の鳥居。古びた奥社には、その全体を覆うように金属の屋根が2重にかけられている。ちょっと無粋な雰囲気だが、仕方ないのか。

無題6

しかし周囲を見渡してみても、笠置山の山頂がどこなのか、よくわからない。しかし奥社の真裏の小高い岩の上に登ると、かろうじて字が読める山頂標を発見した。どうやらここが山頂らしいが、周囲を樹林に囲まれていて、眺望がないのが残念だ。

山頂付近には見どころが多いようで、僕たちは周囲をウロウロしてみた。

無題7

まずは物見岩という展望台に登り、さらに名前は不明ながらも別の展望台らしき場所にも挑んでいく。それらは急峻な岩の上だったり、滑りやすい木の上を歩かねばならなかったりと、意外とハードな場所ばかりなのである。

展望台以外にも、山頂付近にはたしかにおもしろい場所がいくつもあった。こちらは「ヒカリゴケ」が生えているという岩のくぼみだ。

しかし明るい時間だからか、コケが光っているようにはとても思えない。もっと狭いくぼみも覗き込んでみたが、かろうじてわずかに光っている気がしたくらいであった。

「ペトログラフ」なるものもあるらしいが、僕たちには何のことなのかわからなかった。だが、別の場所に移動すると、ペトログラフの日本語表記が「盃状穴刻」というらしきことを説明する表示を発見。改めて盃に似た場所を探してみる。

無題9

なるほど、これか? たしかに丸いくぼみが岩の上に残っている。

ペトログラフ(ペトログリフ)は、正確には文字や模様が刻まれた岩のことをいうようだが、笠置山では宗教上の理由で丸く削り取られた穴のこともペトログラフと呼んでいるようである。それもきっと間違いではないのだろう。

さらに山頂付近をうろついていると、今度は人工的な展望台を見つけた。もちろん僕たちはすぐに登ってみる。

無題10

しかし春先の薄曇りで、遠くの山はよく見えない。晴れてさえいれば、ここから中央アルプスや南アルプスの山々が眺められるようだが、その楽しみは次に来るときに残しておこう。

奥社前で再び休憩。なんでもないコンビニで買ってきたパンがうまい。

_AJM0421

この時期がうれしいのは、低山でもまだ蚊が出てきていないことだ。夏になったら、こんな場所ではゆったり休憩できないに違いない。

僕は下山前に、成瀬さんが通い詰めているというクライミングエリアを見せてもらうことにした。

_AJM0452

舗装された林道を歩いていくと、その途中にはキャンプ場もある。どうやらクライマーが使用することを念頭に作られたもののようだが、注意書きを見ると一般の人にも開放されていた。気を付けて使用すればいいらしい。

こちらは大岩展望台の直下にあるクライミングエリアである。成瀬さんをはじめとする関係者が大切に維持しているのがよくわかる、気持ちのよい場所だ。

無題11

ゴミひとつ落ちていない美しい環境には感心するばかりである。こんな岩、好きな人にはたまらないのだろうな。

その後、大岩展望台の上へ。成瀬さんはスケッチをし始める。僕はその姿を後ろ側から眺めていた。

_AJM0566

う~ん、さすがにうまい! 成瀬さんはこのウェブサイトでも「筆とまなざし」という連載を持っていて、どんな雰囲気の絵なのかは、そちらで見ていただきたい。とくに40回目は、僕のこの記事と同じで、いっしょに歩いた笠置山がモチーフ。要注目だ。

ここから本格的に下山開始していった。林道の途中にあった側溝では、繁殖期を迎えたカエルたちが大騒ぎしている。

_AJM0593

お前ら、色気づきやがって! と思いながらも、生き物好きの僕は何枚も写真を撮ってしまった……。

 

クライミング、ヒトツバタゴ、あんこ、神社。さらにはヒカリゴケにペトログラフ、そして盛りが付いたカエルまで。笠置山は標高1128しかないが、なにやらにぎやかな山なのであった。

 

今回の2人の道具ピックアップ

成瀬さんのシューズは、スポルティバの「ボルダーXミッド」。いわゆるアプローチシューズで、もともとはクライマーが岩場まで歩いていくときに履くことを想定しているが、もちろん一般的な登山にも十分に使える。それにしても、クライマーの成瀬さんが履いているとじつにサマになる。そして、「いつも山ではこれくらい」という絵の道具のセットには、水彩絵の具のほかに鉛筆、筆など。山中で使うスケッチブックは、持ち運びしやすい小さめを使っている。

 

僕のバックパックは、スーリー「スター35」。上部に雨蓋をもたないシンプルなルックスで、水に強い素材に加えて上部の開口部を完全にふさぐレインカバーを持ち、見た目以上に雨には強い。荷物もたっぷり入るが、今回の山行にはちょっと大きすぎたかも。山中まで持ってきた本は『黒部奥山史談』。今回の山歩きとは関係ない内容だが、新幹線での移動中に読んでいたため、バックパックのなかに入っていたのだ。しかし僕は山中にハードカバーの本を持っていくことも実際にあり、いわば成瀬さんの絵の道具に対して、僕は本をお見せしたというわけである。

 

■ルート■
「岐阜県笠置山(登山記帳小屋~笠置神社奥社~物見岩~大岩展望~登山記帳小屋)


■アクセス■
笠置山の山腹の南側には林道が通り、駐車場が数カ所。好みによって歩きはじめの標高を選べる。電車の場合は、JR恵那駅からタクシーを利用するのが便利だ。大岩展望台に近い笠置山クライミングエリアには登山道の分岐から林道を歩いていくが、クルマならば最寄りの駐車場へ直接アクセスできる。


■コースタイム■
3時間

写真◎亀田正人

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