初級

2017.11.21

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高橋庄太郎と岡部文彦さんが奥秩父の西沢渓谷へ。~「山を歩く、山で語る」番外編

 

■今回歩いた人■

無題左:高橋庄太郎(山岳/アウトドアライター)、右:岡部文彦(スタイリスト)

 

雨が多い日本には、急流となった川が作り出した美しい「谷」が多い。だが、道がついている深い谷はあまりなく、その美しさを味わいにくいのが現実だ。そんななか、奥秩父の西沢渓谷はかなり奥まで登山道がつけられている貴重な場所なのである。

僕とはすでに20年近い付き合いになるスタイリストの岡部文彦さんは、渓流釣りがひとつの趣味。以前、この西沢渓谷の付近にも釣りを目的としてきたことがあり、いずれ再訪したいと思っていたという。そこで今回は、2人でのんびりと西沢渓谷を歩いてみることにしたのだった

西沢渓谷入口の駐車場から歩きだした僕たちは、少しの間、車道を進む。といっても一般車両は通行禁止で、広い遊歩道といった趣だ。

1461この日の出発時はあいにくの小雨だったが、天気予報ではどんどん好天になっていくとのこと。谷に入る場合は増水の可能性がある雨天時を避けるのが鉄則とはいえ、これならば狭い谷に入っても安全だろう。

少し歩くと、奥秩父を愛した文学者で登山家の田部重治の一文が彫られた石碑がある。

1569そのタイトルは「笛吹川を遡る」。西沢渓谷は笛吹川の上流部に当たり、その後に富士川と名前を変え、太平洋へと流れこんでいくのである。

西沢渓谷の谷間には真っ白なガスが流れ込んでいた。水量は思ったほど多くはなく、これならばやはり安全に歩いて行けるだろうと安心する。

1591この日は僕たち以外にも多くの登山者が入っているようだった。

車道が終わり、吊り橋を渡ると、本格的に西沢渓谷が始まる。先ほどまでの小雨もすでに止み、僕たちはレインウェアを脱いで身軽になることができた。

無題1その後は坂道を登っていく。沢の水面からは少々離れ、水の流れる音だけが遠くに聞こえている。西沢渓谷は秋の紅葉の時期もいいが、僕たちが歩いたときのような緑もまた美しい。

登山道は再び沢の近くに下りていく。このあたりからは大小の滝が連続し、見どころが続いていく区間だ。歩き始めてから1時間程度でこれだけの場所に来られるとは、なんともお得な感じがする。

1632ちなみに、これは「三重の滝」。その名の通り、三重というべきか三段になっている滝で、なかなかの見応えがある。僕たちは何枚も写真を撮ってしまった。

西沢渓谷は絶景ばかりだ。だから、周囲に気をとられていると足元の確認がおろそかになり、転倒の恐れが高まる。僕も注意しないとな……などと考えて歩いていたら、まったく同じ発想で作られたと思われる看板を発見してしまった。

無題3転んで怪我をする人が多いのだろう。こういう場所では転ぶだけならまだしも、その勢いで沢のなかに転落することもあり得る。そうなると溺死の可能性すら出てくるのだから、気を抜けない。

先ほどまでの雨で濡れた岩の上は滑りやすかったが、僕たちは順調に先へと進んでいった。西沢渓谷の名所にはひとつずつ看板が設けられており、これを確認しながら歩くのがまたおもしろい。次の写真は「フグ岩」である。無題4

なるほど、たしかに右を向いたフグっぽい。それにしても、こんな山中の川に、海のフグがいるとは。

こちらは「母胎淵」。カッコ書きで「欧穴」とも書かれており、一般的には水流によって岩が削られてできた穴のことを指す。

無題5沢の中を見てみると、丸い窪みがあった。この場所のことを「母胎」と表したのだろう。思ったよりも大きな穴で、水の流れが澄んでいるときは、その内側で魚が泳いでいるのが見られそうな雰囲気である。

そして「カエル岩」。だが、どれのことを指しているのか、ちょっとわかりにくい。

17301731この岩のことだろうか……。カエルに見えなくもないように思う。もしかしたら角度を変えて見れば、よりカエルらしいルックスになるのかもしれない。

大小の滝は奥のほうまで続いていった。一歩歩くごとに風景は変わり、まったく見飽きることはない。僕たちの周囲には、水が作り出す轟音がつねに響きわたっていた。

無題7

そう、いつも轟音が……。じつは僕と岡部さんは西沢渓谷を歩いているとき、あまり話をしていない。話をしたいのは山々だったのだが、周囲の轟音に話声が負けてしまい、無理におしゃべりしようとすると大声を出さねばならず、喉が疲れて大変だったのだ。

しかし水の流れが緩やかな場所では、雑談しながら小休憩。

1742西沢渓谷の登山道は狭く、休憩できるポイントも限られているが、こういう場所でこそゆったりと時間を使いたいものである。

これまで登山道は西沢渓谷の左岸(上流側から下流側を見て、左側)についていた。だが、方丈橋を渡ると右岸に代わる。つまり、ここが折り返し地点。これからはずっと右岸の登山道を歩き、再び西沢渓谷入口まで歩いていくわけである。

方丈橋の近くには「七ツ釜五段の滝」がある。数多い西沢渓谷の滝の中でも「名瀑100選」に選ばれた名所中の名所だ。

18381855僕たちはその滝の美しさをたっぷりと堪能。その奥にもまだまだ西沢渓谷の流れは続いており、もっと奥まで登山道がついていたらと夢想してしまう。

頃合いを見て復路を進み始め、途中では大展望台を通過。天気はよくなってきていたものの、上空に雲は残っており、奥秩父の山々はきれいには見えなかった。残念だが、これもまた山というものだ。

無題8復路は、もともとトロッコを使って材木を運んでいた道だという。現在は登山道として利用しているが、道幅は広く、立派な橋もつけられているので、非常に歩きやすい。沢沿いの岩を削って作った沢沿いの往路とはまったく様相が違うのである。

今回は往路と復路が異なるとはいえ、登山道の軌跡はループ状。最後に小酉橋を渡ると、西沢渓谷入口へつながる車道に再び合流する。1994

その直前にあるのが「山の神」の鳥居と祠だ。これまでにここを通った多くの山人や登山者が手を合わせてきたのだろう。「大嶽山那賀都神社」の幟がシブく、とてもよい雰囲気を醸し出していた。無事に西沢渓谷を歩き、たっぷりと楽しめたことを感謝し、僕たちもここで帽子を脱ぎ、手を合わせたのだった。

今回の2人の道具ピックアップ

岡部さんが使っていたサコッシュは、島根発のU.L.ガレージメーカー「hariyamaproductions(ハリヤマプロダクションズ))に頼んで作ってもらったという“銭湯用”。オリジナルの手ぬぐいとマジックソープ(液体石鹸)をつけ、岡部さんが運営しているウェブショップ「バリカンズ」で販売したものだ。フィッシングベストのような形状で、ポケットにはスマホとマジックソープを入れられ、外付けループには濡れた手ぬぐいを引っ掛けられるようになっている。シャツは、岡部さんも加わっているフェニックスの新ライン「アルクフェニックス」のもの。「歩くための機能服」をテーマにしており、ロンドンストライプの生地を使用していながらもストレッチ性が高く、両脇にポケットも付いていて、スナップボタン仕様。街でも山でも着られるようになっている。

僕・高橋が履いていたシューズは、東京巣鴨の老舗登山靴「ゴロー」で特注したカスタムブーツ。内部に入った水が抜ける沢用のブーツを基本にしながらも、ソールはフェルトではなくビブラムで、細かな岩の突起をとらえてくれる。あまり滑りにくくはないが鋭利な岩や石が連続する沢、徒渉を繰り返す必要がある一方で歩く場所の多くは地面の上、などという特殊状況下で力を発揮する。また、今回背負っていたのはモンベルの新型バックパック「リッジラインパック30」。考え抜かれたパターンで縫製個所を最低限に抑え、表面からの水の浸透がほとんどないのが特徴だ。それでも上部のファスナーから水が入る恐れはあるが、その部分にだけ小さなレインカバーをつけることにより、軽量で雨に強いモデルとなっており、使い道が広い。

■ルート■「奥秩父・西沢渓谷(西沢渓谷入口~田部重治文学碑~方丈橋~子酉橋~西沢渓谷入口)

■アクセス■
西沢渓谷入口までは、JR塩山駅またはJR山梨駅からバスが運行している。だが、JR塩山駅からの便は11月上旬まで。それ以降は、通年運航のJR山梨からの便を利用する。

駐車場も西沢渓谷入口にあるが留められる台数には限りがあるので、満車の場合は道の駅みとみ付近の駐車場を使い、西沢渓谷入口まで10分ほど歩くことになる。

■コースタイム■
4時間

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