ピークス

2018.1.19

  • facebook
  • twitter
  • hatena
  • LINE

高橋庄太郎と伊藤朋幸さんが奥羽山脈の蔵王へ。~「山を歩く、山で語る」番外編~

■今回歩いた人

profile

左:高橋庄太郎(山岳/アウトドアライター)、右:伊藤朋幸(元・宮城県高校体育連盟登山専門部委員長)

宮城県仙台市の高校山岳部で山歩きを始めた僕は、東北の山には愛着がある。そのなかでも蔵王は入学後の初めての合宿が行われた場所で、卒業後も足を延ばすことがしばしば。だから、この山にはひときわ思い入れが強いのである。

今回、僕といっしょに蔵王を歩いてくれたのは、なんと当時の山岳部顧問の伊藤朋幸さん。先生とは20数年ぶりの蔵王で、僕たちは高校のときの記憶をたどるようなルートで蔵王連峰の中央部をのんびりと歩くことにした。

蔵王連峰は宮城と山形の県境に位置している。僕たちのアプローチは、当然ながら宮城県側から。JR白石蔵王駅で先生のクルマにピックアップされた後は、蔵王エコーラインでまずは刈田岳山頂直下の駐車場へと向かう。

2

だが途中でクルマを停め、蔵王寺でお参り。じつは蔵王では、100年前の1918年(大正7年)に僕の母校である仙台第二高校(当時は仙台第二中学校)の生徒と引率の教諭9名が遭難死しており、その慰霊碑がここに建てられているのだ。だから、僕が高校生のときから、この付近より入山する際には必ず手を合わせるのが慣わしなのである。

先生は当時、僕たち山岳部部員が作っていた山行計画のしおりをわざわざ持ってきてくれていた。写真のものは僕が入学した年の秋に、蔵王で宮城県の高校山岳部の新人大会が行われたときのものだ。

_75D2023

うわ~、懐かしい。この手のしおりは僕も捨てずに残しているが、先生が保管していたものはほとんど傷んでいない。今まで大切に保管してくれていたのだと思うと、なんだかありがたい気持ちになる。

蔵王連峰の最高峰は、山頂付近が山形県内にあり、標高がいちばん高い熊野岳とされることが多い。しかし宮城県側から見れば、蔵王の象徴の「お釜」がある刈田岳こそ主峰といえなくもない。その山頂直下まではクルマで行くことができ、駐車場から山頂までは数分の距離しかない。そんなこともあって、蔵王エコーラインが開通しているシーズン中、山頂は観光客でいっぱいだ。

ko

1年を通し、もう何度来たかわからないほどの刈田岳山頂。まだ歩き出したともいえない状況だが、まずは刈田嶺神社でこれからの安全のためにお参りをする。

山頂付近からは南蔵王が美しく見え、その手前にはいくつものケルンが積まれている。

_75D2385

僕は前年の秋に不忘山や屏風岳などの南蔵王をひさびさに歩いたが、広くて解放的な稜線は最高だった。だが僕たちは今回、ここから北上していくのである。

緑色の水をたたえるお釜。これぞ蔵王ともいうべき、きれいなカルデラ湖だ。僕は2011年3月の東日本大震災の1カ月半後に残雪のお釜を見たことがあるが、そのときは周囲の外輪山から落ちてきた落石で痛々しい光景であった。しかしいまはもうそのときの面影はみられない。

_75D2133

東北はいまだ復興の途中にあるが、少なくても山は以前と大きくは変わらないように見えるのがうれしい。

馬の背といわれる刈田岳と熊野岳のあいだの鞍部を通り、少しだけ標高を上げる。途中には熊野岳避難小屋。100年前の遭難事故は、この付近で起きたのだ。

3

その記念碑の前で先生と話し込む。この場所を通るほとんどの登山者には遠い昔のことに思われるだろうが、同窓の僕としては毎回いろいろと考えさせられる場所なのであった。

刈田岳から1時間もかからずに熊野岳の山頂へ到着。熊野岳は刈田岳よりは歩かなくてはならないとはいえ、それでも短時間だ。また、山形側の蔵王ロープウェイの山頂駅からも45分ほどで到達できる。

_75D3138

刈田岳や熊野岳、そしてお釜を至近距離から見られる馬の背などは、登山入門に適した山域なのである。

僕たちは熊野岳からさらに北東へと歩いていく。それまでの登山者や観光客でにぎわっていた蔵王主要部に比べると、劇的に静かだ。

_75D3282

この登山道も高校時代に何度か歩いたな……。もう30年近く昔のことだ。いまになって先生と同じ道を再び歩けるとは、僕の人生はなかなか悪くない。

登山者が少ないルートだけあり、一部はハイマツなどでヤブっぽくなっている。道迷いを起こさないように注意したい区間だ。とはいえ、僕たちは順調に進んでいたのだが……。

4

途中の追分の分岐で、思いがけない看板を発見。それを見てわかったのは、僕たちが向かおうとしていた、かもしか温泉方向の道は立ち入り禁止の範囲に含まれるということ。近年、蔵王の火山活動は活発になっており、噴火口のひとつであるお釜の真裏にあたる、かもしか温泉跡も危ないらしいのだ。しかし、じつは僕たちの今回の最大の目標は、そのかもしか温泉跡とその先にある東北大学左エ門小屋を見ることで……。

看板で立ち入り禁止範囲をよく見ると、分岐から直接、かもしか温泉跡へ向かう道は使えないものの、逆側から回り込む登山道からはアプローチできるようである。そこで僕たちは名号峰からいったん峩々温泉に下り、そこから川沿いにかもしか温泉跡に向かうことにした。遠回りになるが仕方ない。それでもトータルでの歩行時間は7時間ほどだから許容範囲である。

5

尾根を下りると、峩々温泉。本当は予定どおりに歩き切ると最後に到着する下山口だったが、予定変更のために途中通過する場所にもなってしまった。

濁川に沿って林道を歩き、それから登山道へ。何度か川を渡っていく。

_75D3884

このあたりは熊野岳から名号峰への稜線以上に人が少なく、ワイルドな雰囲気。蔵王は有名な観光地ではあるが、山歩きという意味では少しは人気スポットを外したほうが楽しいのではなかろうか。

少しすると、お目当ての東北大学左エ門小屋が見えた。この場所こそ、僕が初めて参加した高校山岳部の合宿でベースキャンプとしていた場所。僕が本格的に山歩きを始めたとき、初の山中1泊をしたのはここなのだ!

5

そのとき、小屋で眠ったのは顧問の先生と合宿に参加していたOBのみ。部員はみんな外で残雪の上にテントを張って眠った。

僕が初めてテントを設営した場所には、背の高いフキが生えていた。僕のテント泊を繰り返す人生は、ここから本格的に始まったのかと考えると、とてつもなく感慨深いのであった。

小屋の中に入り、保管されている冊子に目を通す。さすがに僕が高校生だったころのものは見当たらないが、近年にどういう人がここにきているのかを見るだけでも興味深い。

_75D3658

最近も蔵王にはよく訪れているという先生でも、この小屋まで来るのはひさしぶりだったらしく、ふたりで話をしながら長居してしまった。

小屋からさらに先に進むと、かもしか温泉の跡地が近付いてくる。遠くには噴煙が上がり、以前はたっぷりと温泉が流れ出していたらしい。だが、雪崩のために施設は破壊され、はるか昔に営業をやめてしまっている。

_75D3573

本当はお湯が流れ出している場所まで行きたかったが、今回は立ち入り禁止ということで、残念ながら断念。それでもここまで来られたことには満足だ。

同じ道を引き返し、再び峩々温泉へ向かう。

_75D3967

予定どおりのコースは進めなかったが、かもしか温泉跡と東北大学左エ門小屋を見られたのは有意義だった。今回は僕の思い出と見たい場所を連ねるようなルートになってしまったが、やはり蔵王はおすすめだ。かもしか温泉跡や東北大学左エ門小屋はともかく、刈田岳と熊野岳、そしてお釜がある風景だけでも、多くの人に見てもらいたい。

 

■今回のふたりの道具をピックアップ!

6

バックパックは、数年前に山形の天童で購入したグリベルのもの。ちょっとしたハイキングにはちょうどよい大きさで、冬には外側に小スコップを入れることもできる。ジッパーが一気に大きく開くために荷物の出し入れがとても楽になり、重宝しているという。靴は、今回のような軽い登山だけでなく、街中でのウォーキングにも使用しているモンベルのマリポサトレール。ソールが減りやすく、また張り替えができないのが問題だが、それ以上に気に入っているので、この靴はわざわざ買いなおした2代目だ。ゴアテックスを使っているために、雨の日も快調。

7

僕・高橋が今回使っていたバックパックは、グレゴリーのミウォック18。とても軽量だが、背中のパッドは体によくなじみ、背負っている感じがほとんどない。通気性も上々で、すでに数年前のモデルだが、長く使っていきたいと思っている。容量18Lというと小さすぎると思う人もいるかもしれないが、持ち物がそれほど多くはならない無雪期であれば、これくらいが僕にはちょうど使いやすいサイズ感なのである。帽子は最近になって使い始めたテルヌアのもの。遮光性、通気性、吸汗性は悪くはないが、ある意味、いたって普通の帽子である。僕は某メーカーの帽子を長らく愛用してきたが、最近になってとうとう飽きてしまい、最近は別の会社の帽子をいくつか試しているのであった。

 

 

■ルート
奥羽山脈・蔵王(刈田岳~熊野岳~名号峰~峩々温泉~かもしか温泉跡)

map

 

■アクセス
刈田岳のレストハウス前には駐車場があり、JR山形駅から季節運行のバスが出ている(現在は冬季休業中)。宮城県から向かう場合はJR白石駅などからタクシーを利用する。下山口に使う峩々温泉までのバスはなく、ここでタクシーを呼んで白石駅へ向かうことになる。

 

■コースタイム
7時間

 

文◎高橋庄太郎 Text by Shotaro Takahashi
写真◎飯坂 大 Photo by Dai Iizaka

 

高橋庄太郎

山岳/アウトドアライター。高校山岳部で山歩きをはじめテント泊山行をこよなく愛する。著書に『トレッキング実践学』(エイ出版社刊)、『ソロ山行ステップアップ』(地球丸)など

関連カテゴリ・タグ

今、あなたにオススメ

親子アウトドア

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

おススメルート

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

山の楽しみ方

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

山レシピ

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

Promoted

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

Promoted

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

Promoted

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

Promoted

星空観察:夏の大三角形を見る!

More

page top