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2018.1.17

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筆とまなざし #074「オリーブ、島の幸、そして岩峰。小豆島を旅する」

瀬戸内海に浮かぶ温暖な気候の小豆島は、いわずと知れたオリーブの産地。また昔から醤油製造が盛んな場所としても知られています。瀬戸内海の交易の要衝であり、九州から大豆や小麦が運ばれてくる、海に面した島には塩がある、そしてすぐ近くに大消費地の大阪がある、という立地条件と温暖な気候が醤油作りに適していたためだそうで、もっとも多いときでは400以上の醤油会社があったとか。個人的には壷井栄の小説『二十四の瞳』の舞台という印象が強い。

数年前に仕事で訪れた小豆島。そのときに見た岩峰はいまでもはっきり覚えています。島の斜面に聳える鋭い頂の岩山、拇指岳。なるほど、ヒッチハイクのときのように拇を天に向かって突き上げた形に似ています。標高差150mの岩峰で、クライミングをする人もいるのだと教えてもらいました。また、島の北側には吉田の岩場という花崗岩の岩場があるらしく、いつかクライミングのために再訪したいと思っていた場所でした。

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小豆島へ行くことになったのは、ある老紳士がきっかけでした。若いころからクライマーで、日本におけるフリークライミング黎明期の写真を見せてもうと、小川山での写真とともに、気持ち良さそうなマルチピッチを登る写真がありました。手書きのキャプションには色褪せた文字で小豆島と書かれていました。その老紳士は昨年ガンで亡くなってしまいました。これは小豆島へ行くタイミングなのかもしれないと、小豆島行きが決まったのです。

姫路の岩場で1日登り、翌朝のフェリーに車ごと乗り込みました。姫路港から1時間40分と案外近く、うとうととしている間に船は島の北東にある福田港に到着。さっそく吉田の岩場へ向かいました。

福田港からわずか5分ほどでベースとなるキャンプ場に到着。なんとキャンプ場内に温泉もあり、もっとも近い岩場までは歩いて5分。見上げると山のあちこちにスケールの大きな岩壁がそそり立っています。トポで紹介されているのはそのうちのごく一部で、右手に聳える千畳ヶ岳の頂上はドーム状の岩になっており、その側面はマルチピッチができるスケール。右側面は大きく前傾した立派な壁が……。この岩も開拓はされているようですが、トポは作られなかったらしい。

既存のルートには難しいルートこそありませんが、30m以上におよぶスケールのフェイスやクラックを使いながら登るルートなど、個性的で三ツ星のルートがたくさんありました。部分的に錆びた古いボルトもありますが、終了点などは新しくしっかり整備されていてとてもありがたい。吉田の岩場で登った翌日は雨で島内を観光。小豆島の幸をたらふく食べて、キャンプの夜はスーパーで格安だった刺身三昧。3日目は再び吉田の岩場で登り、最終日は拇指岳のマルチピッチ「赤いクラック」へ。脆い岩と錆びたリングボルトの本チャンっぽいルートで、知人も何十年も前に登っていたのだろう。

それにしても北と南でそれぞれ違う岩質の大きな岩壁が、そこかしこにそびえ立っている小豆島のポテンシャルには驚かされました。この岩が登れたら……と考えずにはいられません。ひとまず近いうちに再訪したい。そう思いながらフェリーに乗り込みました。

 

【連載一覧はこちら!】

 

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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