ピークス

2018.2.7

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筆とまなざし #078「あのときに見た風景を、あのときに出会った人のために」

「桜島の絵を描いて欲しい。10月に新しい家に引っ越しをするから、そこに飾りたくって。引っ越しに間に合わなくても良いから」

大学時代の友人からそう連絡があったのは、夏も終わりに近づいたころでした。

屋久島で生まれたから「久子」。大学1年のとき、ワンダーフォーゲル部の新歓コンパでそういっていたのが印象的でした。南方系の明るさがあり、快活に笑う姿が爽やか。ぼくは数カ月でワンゲル部を辞めてしまったのだけれど、その後も彼女をはじめほかのワンゲルメンバーたちとの親交は続き、男仲間とは4年間共同アパートでいっしょに暮らしました。

東京で就職した彼女は数年後に結婚して名古屋に移住。ぼくが岐阜にUターンしてからは姉夫婦が営むパン屋にもときどき遊びに来てくれます。いまではすっかり元気なお母さん。そんな彼女にとって、ふるさとの山が桜島なのでした。

数年前、屋久島へ行くために高速バスを乗り継いで鹿児島へ行きました。そのとき、フェリー乗り場から桜島を見たのを思いだしました。頂上まで見えていたのかはうろ覚えですが、あのときに見た風景を今絵に描くことになるとは。人生、どこでどうつながるかわからないものです。

さて、そんな依頼があったにも関わらず、なんやかんやと時間がすぎてしまい、ようやく桜島に絵に取りかかったのが先週のこと。実際に自分の目で見た記憶と、彼女から送ってもらった写真などを重ね合わせて描く作業。数日かけて描き終え、額裝して郵送しました。

ときどき思います。ふるさとの山があるってすてきだなと。人によってそれは海だったり川だったりするのかもしれないけれど、仰ぎ見る大きな山は、いつも心のどこかにあって、思い出すと心が和む、心の拠りどころのような存在。

「また描いてもらうなら韓国方面から見える霧島連山か大野柄から見える桜島か。いつかそれが東海の山になっていくのかな」

ああ、そうか。新しい土地がふるさとになり、その土地に聳える山がふるさとの山になる。そんなふうに、軽やかに生きていけたら良いな。ふと、屋久島の明るい陽射しを思い出しました。

 

【連載一覧はこちら!】

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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