2016.10.31

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【ライター/フォトグラファー三田正明の潜入レポート】 Great Cossy Mountainが土屋智哉・豊嶋秀樹両氏を招いてイベント GREAT IMPULSE 2を開催。その一部始終と大越智哉a.k.a.コッシーという男について。(後編)

【前編より続く】

 

さて、前編でもお伝えした通り、大越智哉a.k.a.コッシーというちょっと面白いおじさんが全身全霊で取り組む新進気鋭のガレージメーカー、Great Cossy Mountain(Gコ山)が主催するトークイベントが、去る10月15日、Gコ山が工房を構えるビルに同居する西千葉のcafe STANDで行われた。

 

ゲストに招かれたのは言わずと知れた「UL伝道師」三鷹ハイカーズデポ店主・土屋智哉氏と現代美術を主なフィールドに様々な活動を行う豊島秀樹氏(豊嶋氏は11月5~6日に九州の九重山脈で行われる〈ハッピーハイカーズ法華院ギャザリング〉の発起人でもある)という、コッシーと同じく1971年生まれのお二人。

 

「歩くことについて」という大きすぎるテーマで2時間に渡って交わされた対話はあちらこちらに飛びつつ、非常に有意義なものであった。後編ではその中から特別に一部を抜粋し、読者と共有したい。濃ゆい面子による濃ゆいトークの模様を、ぜひ楽しみください。

 

Great Cossy Mountain presents GREAT IMPULSE 2 鼎談「歩くことについて」より

土屋智哉(Hiker’s Depot) 、豊嶋秀樹、大越智哉(Great Cossy Mountain)

(2016年10月15日 於 西千葉cafe STAND)

 

2016_10_15_9999_43

(本文)

土屋:歩くことって誰にでもできることだし、考えなくてもできることだけど、だからこそ奥が深いと思うんだよね。僕にとって歩くことは考えることや感じることに直結していて、それはなぜかというと、歩いている間って暇だから。だって山では歩くことしかやることないもの。

走ると入ってくる情報量が多くて気にしなくちゃならないことが増えるけど、歩くくらいの速度だと、情報処理が楽なので「オートモード」に入るとすることがないから、見ることとか感じることにすごく時間を費やせる。なのに歩いていると時間があっという間に過ぎたりして、歩いたり考えたり感じたりすることだけで1日が過ぎていくのって、すごく幸せだなって。だから歩くのって飽きないんだと思うんだよね。

 

豊島:僕は歩くことに飽きたことがあって、前に「J-WALK」と題して、北アルプスを日本海から入って穂高まで歩いて、そこから折り返して剱岳まで「J」の字に三週間くらいかけて歩いたことがあっるんです。そのとき稜線歩きが日常になり過ぎて、「飽きる」は言い過ぎかもしれないけれど「普通」の感覚になってきた。最後に剱岳に登ったときもなんのカタルシスもなくて、もっと達成感でいっぱいになるのかと思っていたんですけれど、そのことに逆にびっくりした。

でも、半年くらい歩き続けるようなアメリカのロングトレイルに対する「いつか行ってみたいな」っていう憧れは、逆にそのときに芽生えたかも。

 

土屋:僕も去年奥多摩の雲取山から北アルプスの立山まで二週間かけて歩いた時も、歩き終わった感慨はなかった。思ったことは「早く富山の街に降りて寿司食べたい」、とか、そんなこと(笑)。

でも、それってアメリカのロングトレイルを歩くハイカーも同じなんだよね。生活の場がトレイルになるから、トレイルから街に帰るんじゃなくて、街からトレイルに帰る感覚。街に住んでいると山に行くのが娯楽だけど、逆に街に降りることが娯楽になる。そうなってくると、街に降りたときに不自由さを感じる時がある。

「今日は街に降りてレストランで食事をしてシャワーを浴びるぞ!」って思っても、町が小さくてモーテルが全部満室だったりすると、その小さな町に僕の居場所がないんだよね。山の中では自分の生活をすべて自分で決められていたのが、街に降りるとなかなか野宿できる場所はないし、そういった外からの要因で自分の生活が規定されちゃうのがすごく不自由で、「だったら山の中に戻っちゃた方が楽だ」って思った。でも、その感覚が面白かったんだよね。それまで街は快適だって思っていたけど、実は街は不自由なんだって。

自分は毎日店の売り上げを数えている世知辛い世界にいる人間だし、シンプルライフとは程遠い暮らしだけど、山に「行く」のではなく、「戻る」って視点をちょっとでも持ち続けたいなって思うんだ。シンプルライフを実践するのは無理でも、誰でもそういう目線を持つことができることができるのは、山を歩くことのすごく良い点なんじゃないかな?

 

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左より豊嶋秀樹氏、土屋智哉氏

 

豊島:僕は山を歩くようになって、オセロで全部ひっくり返されるみたいな価値観の逆転があったんですよ。山でウルトラライト・ハイキングのスタイルなら4.5kgくらいの荷物で生きていけるなら、街に降りてもモンゴルのゲルに住む遊牧民みたいに最小限の荷物で生きていけるかもしれないって。

僕は何年か前に東京から福岡に引っ越したんですけれど、それまでは僕もモノが多くて、5年以上段ボールから出していない荷物と共に引っ越しを続けている状況だったんですけど、嫁と「それはいらんやろ」って話になって、でも捨てるのはもったいないから、嫁がヤフオクで売り出したんです。そしたら「なんでも売れるぞ」ってなってきて、どんどんエスカレートして今はほとんど何もないがらんどうみたいな部屋に住んでいるんですけど、それでも普通に生活できていて。

ちなみに嫁は古着が好きなんですけど、最近は買ってきたと同時にヤフオクに出品していて、ようはそれが売れるまでの間の在庫を着てる感覚(笑)。だからワードローブには服がたくさんあるんだけど、自分のものは殆どない状態で、最初は「馬鹿なことやってるな~」って思ってたんですけど、最近は「ちょっとすごいかも」って(笑)。

 

土屋:それは新しいね(笑)。

 

豊嶋:僕は大阪出身なんですけど、東京にも7年くらい住んでいて、でも仕事は全国各地の美術館とかでやることが多くて、実は住む場所はどこでもいいんじゃないかってなったんです。それで嫁の出身の福岡に行ったんですけど、その時までは会社を経営したり割と持ち物が多い人だったんで、それも「全部やめー!」ってなって。

今は事務所もない、会社もない、肩書きは「まあまあ無職」みたいな(笑)。そのくらいあんま仕事もしていないんですけど、福岡では東京と生活にかかるコストが圧倒的に違うんです。東京に住んでいたときは家賃12万くらい払って、さらに駐車場も2万5千円とかして、毎月14万5千円をフリーランスのアート系の仕事の人が払うのは結構大変じゃないですか。でも、福岡行って家探していたら、150万とか250万とか、500万円以下で買える物件が山ほどあって、それをお金かき集めて買ったんですよ。東京に住んでた頃は年間10ヶ月はガンガン働かなくてはならなかったとすると、今は3ヶ月くらい頑張って働けばなんとかやっていけるくらい生活の維持費が圧縮されて。そうなると三週間くらい山行ったり、来月も1ヶ月インドに行くんですけど、そういうのも一大決心して「会社辞めて行くぞ!」みたいな感じじゃなく、割と日常と地続きになってきた。

でも、それも自分の中では歩くことと繋がっていて、僕はウルトラライト・ハイキングを知ったのは山と道の夏目(彰)君からなんですけれど、彼と山歩きに行ったとき、僕は80Lくらいのザックを背負ってたのに、夏目君は冗談みたいに小さな荷物で来たんですね(笑)。あのとき愕然と見せつけられた重量の違いが、東京を離れて福岡に行ってみたら、「こんだけの荷物だけで俺の人生行けるんとちゃうの?」って繋がって。で、「今のとこなんとかなってるわ」って。いつまでできるかわからないですけどね。

 

進行役を務めるふりをしながらもう一杯お酒が飲みたいと思い始めている大越智哉a.k.a.コッシー

進行役を務めるふりをしながらもう一杯お酒が飲みたいと思い始めている大越智哉a.k.a.コッシー

 

土屋:ウルトラライトな荷物で山を歩いているときと生活が近くなったってことだよね。僕はそこまではできていないけど、うちの店がインターネット通販をやらない理由はそれと近いかも。それでお客さんに迷惑かけているのは重々承知なんだけど、顔の見えないお客さんに商品梱包して発送するのって、僕はあまり楽しくないんだよね。それよりも店でお客さんとだべって、馬鹿話をしながら商売をしていたい。それって僕の中では歩くスピードに近いというか、自分にとって仕事の適正な処理速度がその辺だと思っている。インターネットの世界ってすべてが速いじゃん。もちろん仕事は頑張っているけど、無理はしたくない。とはいえ忙しくなっちゃっているときもあるんだけど、店をやっていく中でお客さんと話しているときがやっぱりいちばん楽しいし、そういう歩くのと同じような速度感は、お店をやっていく上でも生活の上でも大事にしたいと思っています。

 

==============================

 

あれ、コッシーの発言がなかったぞ!? 土屋氏・豊嶋氏ともに抜群のトーク力を持つ百戦錬磨の手練れであり、限られた字数の中ではホスト役であるコッシーの入る隙間がなかったことをここに謝りたい。まあ、前編であれだけ褒めちぎったんだからいいでしょ、コッシーさん。

 

ともあれ、Great Cossy Mountainには注目である。何よりこんなイベントを自前で行う心意気が良いではないか。その前にECサイトの商品がほとんどソールドアウト表示である(2016年10月現在)ことをなんとかして欲しいと思わないでもないが、ここだけの話、ソールドアウトでも欲しい人は頼めばなんとかしてくれるらしい。

 

白黒にしてみたらちょっとかっこいいおじさんに見えなくもない大越智哉a.k.a.コッシー

白黒にしてみたらちょっとかっこいいおじさんに見えなくもない大越智哉a.k.a.コッシー

 

トークライブの最初に「Great Cossy Mountainはウルトラライト・ハイキングのイズムをもっとも継承しているギアメーカーである自負がある」と語った大越智哉a.k.a.コッシー。その宣言通り、近々バックパックを自作するためのキットを販売する予定もあるという(ULの父レイ・ジャーディンもバックパックやタープ等の自作キットを販売しており、ギア自作はULイズムの保守本流である)。さらにはゆくゆくはすべてのプロダクトをキット化し、自分に縫製を頼みたい人には縫製するが、基本的にはユーザー自ら縫製する形が理想であり、「俺はそれをネオ・キャピタリズムと呼ぶ!」とトークライブ後の高揚と酒の酩酊のなかで語ってくれた大越智哉a.k.a.コッシー。

 

うん、それができれば筆者も最高にカッコ良いと思う。面白いおじさんの挑戦がどこまで続くのか、今後も固唾を飲んで見守りたい。

三田正明

カメラマンとしてキャリアをスタートしつつ、旅や山にはまる過程で徐々にライター業も始め、時にインタビューをしたり、時にポートレートを撮影したり、時にモデルさんの隣でにやけ顔を晒してアウトドア誌の紙面を汚したり、いつの間にか自分の職業が何なのかよくわからなくなってきた42歳2児の父

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