ピークス

2018.1.31

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筆とまなざし #077「好奇心を育てる本、思い出を整えるノート」

本の整理をしようと本棚から本を引っ張り出すと、部屋中が本の海になりました。足の踏み場もないとはこういうこと。学生時代に読んだ学術書や新書、文庫本、友人からもらった絵本、画集、そしてこれまでに仕事で記事を書いた雑誌……仕事をすればするほど増えていく雑誌は、整理するという面ではなかなかの困りもの。ずらりと並べられる場所ができると良いのですが。種類ごとに段ボールに入れてみたものの、持ってきた5箱はすぐにいっぱいになってしまいました。元来のものぐさな性格のために整理はまた日を改めて、ということにすると、空はすでに夕焼けに染まっていました。

本のなかに埋もれて、懐かしいノートが出てきました。山や旅に行くときに持っていく小さなポケットノートです。学生時代はコクヨの「測量野帳」に記録を書くのが通常でした。濃い緑色をしたしっかりとした表紙のもので、中は水色の格子状の升目になっています。ライターや動植物の学者もフィールドワークで使う人の多いお馴染みのものです。何冊もあるなかで目に留まった1冊は、ダクトテープで2冊をくっつけてあるものでした。長期で出かける場合など、1冊では足りなさそうなときは2冊をまとめていたのです。表紙には「黒潮の房飾り 2005.8.26-9.26」とあります。

学生時代、カナダ西海岸の先住民の土地を訪ねたり、明治時代にカナダへ渡った日本人移民の歴史を訪ね歩いたりという旅に何度か出かけました。これは大学院1年のときに旅したときの記録。恐る恐るページをめくると、その場で見た風景や思ったことなどの日記、フェリーの時間、食べたものの値段、カレンダーを書いて旅程を考えているほかに、現地で出会った日系人に話を聞いたときのメモや、先住民のおばあさんの住所などが書かれていました。

「ああ、自分は当時こんなことに興味を持って、こんなにいろんな人にお世話になっていたんだ」

そう思わずにはいられませんでした。そこには、いまとはまったく違った時間をすごす自分がいました。あれから10年以上、自分の興味も自分を取り巻く環境もずいぶんと変わりました。変わっていないことといえば、旅先で絵を描いて、文章を書いていつことくらいかもしれません。人生とは、そういうものなのでしょうか。

フリーランスの書き手となり、しばらく経ったころからはミドリの「トラベラーズノート」を愛用するようになりました。表紙は牛革製で、中のノートだけ入れ替えが可能。冊数が溜まっていってもかさ張らないので便利です。なにより見た目がかっこいい。これに思いつくまま文章を書きなぐり、帰ってきてから原稿を書いています。

それにしても、最近はめっきり本を読まなくなってしまいました。本から刺激と好奇心と新しいアイデアをもらっていたはずなのに。そういえば、めっきりそんな好奇心がなくなってしまったなぁと自戒し、まだ読んでいなかった本を数冊手に取りました。パソコンやスマホはほどほどに、本を読んで妄想を膨らませる日々を、また取り戻したいと思います。

 

【連載一覧はこちら!】

 

成瀬洋平
Yohei Naruse

1982年岐阜県生まれ。山を歩いて見聞きしたことを絵や文章で表現することをライフワークとする。雑誌への執筆のほか、展覧会や水彩画ワークショップも開催。雑木林の中に自力で制作した小屋で制作に取り組みながら、地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画などにも携わる。
ブログ http://d.hatena.ne.jp/naruseyohei
ウェブストア https://naruseyohei.stores.jp

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